「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

ダンパってなんだ?

実はダンパ付きの焙煎を使うのは、ディスカバリーが初めてなんです。だから、ダンパの特徴っていうか役割が未だに掴めてないんですよね…。でも、ここ最近、ちょっと思い至ったことがあるので、それを言語化してみます。

いつも大体G0.6kpa(ガス圧0.6kpa)、D1(ダンパ1)で暖機していると、ある一定の温度で上昇が止まるんです。まぁ供給と排気のバランスがちょうど取れているポイントってことなんでしょうが、ダンパを開けると上昇し始めるんですよね。それで、またあるところで上昇が止まる。これってガス圧とダンパの組み合わせによって到達できる温度の上限を表しているように感じました。到達できる温度が高ければ高いほど、RORも自然と高くなると思われます。つまりどのくらいのペースで焙煎したいのかによってダンパの開度が決まるし、煎り止め温度が高ければ、必然とダンパも開いておかないと到達できないので、それも関係してくるのかなぁと。

原理的には、空気の流量が増えたことで対流による熱伝達が起こったということなのだろうと思います。でも、このような温度の上げ方ってどうなんでしょうか。暖機中は避けるべきかなぁと思いますし、焙煎としては…フェーズに寄るでしょうか。

なんとなくイメージしているのは、流量が増えると流速が上がること。
主にドライフェーズでは流速が上がることにより、生豆の乾燥、特に表面の乾燥が進んでしまうような気がします。ドライフェーズという名前なので乾燥させようとしちゃうんですけど、中心部分の温度を上昇させなくてはいけないし、生豆全体を乾燥させなくてはいけないんですよね。木材の乾燥技術なんかを参考にすると、木材の中心まで十分に乾燥させるためには、乾燥速度を上げないことが重要になってくるそうです。そうなると生豆の中心温度が十分に上がってきたとしても、急激な温度上昇や流速の上昇は避けるべきなんです。

個人的は感覚では、投入直後からD2以上にしていると、コーヒーの液体からなめらかさが消えてざらつく印象がありました(質感の劣化)。もしくは粘性が低いさらっとした液体になる印象がありました(量感の低下)。表現したいのは、つるつるした液体なので、現状はD1でしか焙煎していません。ですが、それでもざらつくことがあって(特にブラジルなど軟らかい豆やナチュラルなどの水分の少ない豆を焙煎しているときに感じます)…。

だからちょっと実験してみました。排気ファンを外してD1にして、さらにその出口を布で塞いでみたのです。D1以上の全閉です。当然、ホッパーやスプーンの穴があるので完全に塞ぐことはできませんが、可能な限り空気の流出を防いだ感じです。想定通りでしたが、温度計の数値はほとんど上昇しませんでした。でも炎が釜に届いていたので、温度計の数値は上がらなくても釜自体に蓄熱はされているのかなと思いました。結局、40分の暖機で200度に達しなかったので、しかたないので192℃で投入しました。煎り止め温度は205℃。焙煎時間は12分54秒といつも通りのペースでした。

カッピングは明日やるので、なかなか楽しみなのです。ドライフェーズを全閉で通過しているので、表面の乾燥が始まる前に、中心部分の温度を上昇させる時間は確保できていると思いますし、流速が最低なので乾燥も中心からできていると思います(願ってます)。

これまでダンパを使うことに疑問を感じませんでしたが、全くその意義というか効果、効用を理解できておりませんでした。でも完全全閉で焙煎したことで、感じたのは…あくまでも所感ですが、①ダンパを閉じても焙煎できるということ、そして②ダンパを開けるということは対流を起こすということで熱風で焙煎するということになるのだな、ということです。おそらく、前者は熱伝導で熱量を供給することであり、後者は熱伝達で熱量を供給することなのだと思います。前職を含め、これまでの焙煎で、熱風で焙煎したコーヒーは液体の粘度の低さ、ドライ感、フレーバーの立ち上がりの良さ、いい意味でのキレの良さがありました。ドライフェーズは閉じ気味にするとしても作りたい味わいに応じて、熱量を熱伝導で供給するのか熱伝達で供給するのかを決める必要があるということですね。

そういえば以前、ディスカバリーは排気が強いということを聞いたことがありました。どういうことなのかわかっていませんでしたが、今回排気ファンを外してでも全閉環境を作ったことで、D1でも強いってことなのかなと思い至りました。ボクの知り合いが10kg焙煎機を購入したのでコーヒーを飲ませて頂いたのですけど、とても滑らかだったんです。びっくりするぐらい。直火だったから余計に驚きました。おそらくですが、ドライフェーズで表面からの乾燥をしっかり抑えられてた、つまりダンパの開放度が適切だったってことなんだと思います。かなり開かないとダンパが効かないって言ってたので。ボクが好きだったあのなめらかさは、流速によって生まれるのかもしれませんねぇ。

さらに言えば、水抜きは遅いほうがいいってのも聞いたことがありますから、もしかしたら全閉で火力を抑えて時間かけて抜いてったら低温焙煎のような甘さが出るのかもしれませんねぇ。ワクワク。