「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

水抜きとメイラード反応

水抜きが大事だっていろんな本に書いてありますし、いろんなサイトでも書いてありますし、英語でもDrying Phaseなんて呼びますし、スペシャルティコーヒーの父であるジョージハウエルも水抜き至上主義なのだそうですし。いろんなところで見聞きする言葉です。その一方で、水抜きなど意識しないでも、焙煎していれば勝手に抜けるという方もいらっしゃいます。そりゃそうだとも思います。水分ですからね。200℃前後まで温度を上げてるのに抜けていない方がおかしいですもの。さらには、水分は残すべきだとおっしゃる方もいらっしゃいます。

いろんな意見がある原因として、一番大きなのは目標とする味わいがそれぞれ異なるからだと思います。同じだったとしても個々人の味覚が異なりますから、同じものを見ていても同じには感じていませんし、それに使っている生豆の品質や焙煎機、環境などなどによって意見が異なるのだと思います。


ところで、メイラード反応は、熱とアミノ酸と糖の化学反応らしいです(ちなみに、カラメライズ反応は熱と糖の化学反応だそうです)。メイラード反応が一番活発になるのは、水分活性が0.6~0.8(水分値で言えば10~15%くらい)なのだそうです。アミノ酸と糖が熱エネルギーによって化学反応を起こし、褐色物質を生成するのだそうだけど、それが活発になるということはたくさん褐色物質が生成されるって理解でいいのかしら。

ということは、焙煎で大事、大事ってよく言われる「水抜き」をしてしまうと、水分活性が落ちるからメイラード反応は活発に起こらなくなると思われます。褐色物質はあまり生成されないってことになるのかしら。水抜きはメイラード反応のためではなさそうです。

それに比べて、水抜きしなかった場合、メイラード反応が活性化すると思われますから、アミノ酸と糖が化学反応を起こし褐色物質をたくさん生成するのだと思います。当然、糖がどんどん消費されていくことになるし(コーヒー豆が保有する糖の量がそのまま味覚的な甘さになるわけじゃないと言われるものの…)、褐色物質は甘さではなくコーヒーに含まれている主な苦味成分として説明されていたことを考えると、メイラード反応によって甘さが形成されるとは言えないように思います。また、バーベキューソースがそうであるように、メイラード反応を繰り返すとどれも同じ味になっていくことを考えると、生豆の個性も消えてなくなっていくと思われます。

つまり、水抜きが大事と言われるのは、メイラード反応を抑えることで褐色物質の生成を抑え、糖を保持し、素材の個性を残すことにつながるからだと思われます。メイラード反応によって甘さを生成するという説明よりも納得できる気がします。