焙煎中の表示温度と実際・・・
久しぶりの焙煎ネタです。
唐突ですが、温度計って何なんでしょうか。熱工学って全くの門外漢なので、自分が持っている物理の知識でしか解釈できないのですが、物理的に接触した物質の温度を計測するって可能なんですかね。いったい何を測ってるんでしょうか…。温度計を構成する素材の膨張とか歪なんかを拾ってるのかしら。でもそれって物性の影響はどうするのか。実験してメモリだしするんでしょうかな。いや、そもそも原器って何が担ってるんでしょうか…。
とまー、温度計が接触した物質の温度を表示しているのはちょっと疑問です。応答性の問題もありますし。200℃のオーブンにもともと刺さっている温度計と刺したばかりの温度計では表示されている温度が違うはずなので、表示温度の話をするときに時間を含めて考えないと意味がない気がします。
こんな感じで温度計に疑問を持ったのは、暖機を安定させようと考えたときなんですけど、今はまったく理解できていませんが、温度計はそんなに信用できるものではないのだなと思っています。なので、いまは、釜や熱風、生豆を含めた温度計周辺の環境温度を表示しているんだろうなぁくらいに思っています。
まぁそんなこともあって、表示温度と色の変化、表示温度と形状変化の関係を考えたりしました。
前者については前職から、投入温度が高いと170℃くらいから色づき、投入温度が低いと150℃くらいから色づくことを経験していました。先の温度計の話を考えれば、これは表示されている温度と実際の生豆温度の乖離によるものだろうと見当がつきます。すると、表示温度よりも色の変化を追いかけた方が生豆本来の温度に近いんじゃないでしょうかね。むかしはそんなことしてたら安定しないなんて思ってましたけど…。メイラード反応やカラメライズなど化学変化はエネルギーの状態によって起こったり起こらなかったりするわけなので(励起とか言いましたっけ?)、色の変化は、実際の生豆の温度の代替になると考えていいかもなぁと思ってます。
一方、後者はどうなんでしょうかね。コーヒー豆の焙煎においては、形状変化と言えば膨張と収縮ですけど、その駆動力は一体何なんでしょうかね。ガラス転移ってやつでしょうか。生豆は釜に入れた瞬間から蒸発は始まっているはずなので、徐々に内圧が高まっていると考えていいはず。黄色く色づく直前においてはメイラード反応が起こるくらいなので130~150℃くらいでしょうか。それなら沸騰しているだろうから自由水に関しては気化していると思っていいのかな。それによる内圧上昇がゴム化した生豆の膨張を促しているのだろうか。となると生豆の形状変化は内部の蒸気圧と生豆を構成するセミセルロースとやらの強度によると考えられるので、表示温度はおろか色づきとも関係しないのかしら。
確かに、田口さんのスペシャルティコーヒー大全で水抜きが終了してシュリンクが完了した状態はかなりメイラードが進んだ感じでした。排気ファンを止めて焙煎していたころと同じ感じです。一方で、ここ最近やっている投入温度230℃、ガス圧1.6kpaのパターンでは、生豆が黄色のときにシュリンクしていました。形状の変化が内部の蒸気圧と生豆の強度の関係に応じるなら、投入直後から大きな熱量を与えることで蒸気圧を高め、含水率と温度の関係からゴム化が起こり、色づく前に水蒸気の排出が行えていると考えてもいいのかもしれない。むかーし何かの本で読んだのだけど、メイラード反応が始まってしまうと水が抜けなくなるから、水抜きは色づくまえに終わらせなければならないと。こういうことなのかしらねぇ。ちょっとそっち方向で進んでみたいと思います。
そしてもう一つ。
目標とするコーヒー豆と比較してカッピングして思ったんですけど、自分のは口当たりはとてもいいんですけど香りがそこまで感じられないんです。液体が重たくどっしりとして飲みごたえはあります。ですが、フレッシュなフルーティな華やかな香りを楽しめるようなコーヒーは、このやり方では焼けないのだと感じました。
目標としているコーヒーの良さは、口当たりのなめらかさと口に含んだ直後の鼻に抜けていく香りの上昇気流でした。まずは口当たりの良さを求めてやってきましたが、ここいらで香りを立たせるためにはどうしたらいいのかを考えていく必要があるのかなと思い始めました。
これまで、ざらついた印象が出た方が香りを感じることが多かったことから、大雑把な認識ですが、香りを立たせるためには一種のドライ感は必要なのかもしれないと思っていました。ですので、今まで封印していたダンパがそろそろ出番なのかなと思っています。
排気ファンを停止して全閉の状態で焙煎すると酸質がかなりきつくなります。そんな感じですので全閉では焙煎せず、爆ぜたら排気ファンをONにしていました。(口当たりは良いですがね。液体は重たくて香りも立たないので、浅煎りには向きません。深煎りならトロっとした口当たりを楽しめますが)
また排気ファンをONにするタイミングは、ハゼのとき以外にも、生豆が白っぽくなったとき、色づき始めたとき、ブラウニングが始まったときなど、いろいろ探していましたが、いずれの場合も口当たりがざらついてしまって、とても許容できる状態ではありませんでした。ただ、爆ぜたタイミングであればゼロではないんですが許容できる範囲でしたので、それでやってきた次第なのです。
排気ファンの取り扱いについては、あまりいい印象がありませんが、これから香りを出していくために排気を導入しなきゃいけないことに戦々恐々です。が、なんかいい手立てが見つかることを祈って頑張りますー。