「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

熱力学の復習

庭のびわが美味しそうな色をしてきました。まだ緑っぽい黄色の実もありますが、真っ黄色なのからちょっとオレンジがかったものまであって、焙煎中のお豆みたいです。

さて先日の投稿から10日ほど経ちましたが、カッピングと検証を繰り返していました。結局、前回のプロファイルは、3日目から強いえぐみがでてきてしまいました。そのうえ、思いつくままに手当たり次第にプロファイルを試してしまったので、いまは頭の中を整理できていない状態です。

それに思っていた以上にカッピングのぶれが大きいようです。エイジングの影響があるとはいえ、ブラインドでカッピングしてみれば、全然コメントが定まりません。初日に高評価を下していたものが、翌日には低評価なんてのはざらにありました。これまでも頭が先行してしまうことが頻繁にあったので、切り離していたつもりだったんですが、なかなか難しいものです。第一印象に引っ張られてしまうのも悪い癖ですね。ただ、ここら辺の問題は、インナーゲームと似ているので、改善できるかもしれません。

この10日ほどの間で、バッチサイズを減らしてみたり、投入温度やガス圧、ダンパの開度やタイミング、火力操作、デベロップメントタイムなどなど思いつくものを手当たり次第に試してみましたが、思ったような味わいにかすりもしませんでした。


まぁ、そんな中、改めて熱力学の勉強をしたので、復習がてらに。
熱量の移動速度、つまり単位時間当たりに移動する熱量は、二つの物質の温度差に比例するので、釜と生豆の温度差が大きければ大きいほど、1秒当たりに移動する熱量も大きくなります。逆に、温度が同じだった場合、熱の移動は起こらないということになります。

んで、焙煎機の場合、蓄熱性がどうだとか、そんな話をよく耳にするけど一体何なのかと。比熱(比熱容量)は1gの物質の温度を1℃上げるために必要な熱量を表し、物質の温度変化のしにくさを表しています。物質には大きさがあるので、実際には比熱に質量を掛けた熱容量で考えます。熱容量が大きいほど熱しにくく冷めにくいです。要は、同じ素材で製造された釜ならば、質量が大きいものほど熱しにくく冷めにくいため、常温の生豆を投入しても温度を維持することができます。蛇足だけど温度計は熱容量がめちゃくちゃ小さいのだと思います。細いものほど応答性が高く、太いものほど応答性が低いので。この熱容量とやらが蓄熱性と考えてよさそうですね。

調べてみるとよく出てくるのが、板厚が薄いフライパンでお肉を焼くと焦げやすいということ。これは火力に対して敏感に反応するため、適切な火力に設定していないと、あっという間に適温を通り越し高温になってしまうからです。おそらく適切な温度管理が可能であれば、板厚の違いは問題にならないと思います。ですが現実的には、板厚が薄い釜の場合、ちょっとした火力の操作ミスが焦げに繋がり、バーナー操作が難しいと言えます。

それならってことで、一時、バッチサイズを下げたら蓄熱のある焙煎機と同じになるのでは?って考えてましたけど、それは甘かったですね。確かにバッチサイズを下げることで、相対的に釜が供給できる熱量を大きくできるけど、そんなことに関係なく、バーナー操作はシビアで、焦げやすく生焼けしやすいことには変わりないですからね。

それに熱容量が大きかったとしても小さかったとしても、程度の差こそあれ釜から熱量が奪われていることに変わりがなく、その奪われた熱量をもって生豆が焙煎されていることにも変わりがない。大事なのは、釜にどのくらいのペースで熱量を供給するべきなのかってことだと思います。バッチサイズや含水率によって変わるだろうそのペースを決定するガス圧の設定が非常に重要なのだと思います。


…っとまぁ、当たり前の結論にたどり着きました。


蓄熱がどうであれ、ガス圧はあまり触るべきではないのかもしれませんね。特にボクみたいな輩は。煎り上りが魅力的なカップにはならないかもしれませんが、初期火力が適切であれば、飲みにくかったり飲めなかったりするようなコーヒーにはならないんじゃないかなと思うんです。下手に操作して焼けたりしてはしょうがないですからね。

それと、結局の目的は生豆の集合体の温度を上げていくことですから、バッチサイズに応じてガス圧が決定されるんじゃないかなと思います。


そんなこんなで、本日のメニューは、投入量250gに対して
①200℃投入、初期火力1kpa
②200℃投入、初期火力1.2kpa
③200℃投入、初期火力1.4kpa
④200℃投入、初期火力1.6kpa

評価する点は、口当たりのなめらかさ、アフターのドライ感、苦味、えぐみの有無です。
初日の所感では、③あたりがいいかも。バカ舌ですので何とも言えませんが。


(2022.06.05 追記)
熱容量の話を思い返していて、ふと思いついたんですけど、蓄熱性の高さを温度変化のしにくさと考えれば、熱風式焙煎機よりも半熱風式焙煎機の方が高いと言えそうです。ただ、ローリングもプロバットもどちらも人気なのを考えると、どちらのタイプが焼きたいコーヒーを表現できるのか大切なんだなと改めて思いました。