「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

水まんじゅう

時間が経つのは早いもので、コーヒー関係の仕事を始めて早8年が立ちました。体感では、ほんの3年程度の感覚なんですけどね。それだけ夢中だったということでしょうか。いや、夢中だったのではなく必死だったのかもしれませんが。

まぁどうでもいいんですけど。
仕事がらコーヒーをたくさん飲むわけですけど、いろんな人のコーヒーに触れていくことで、自分が表現したい味わいが段々と明確になっていきました。

ボクは昔から、勉強とか考え事をするときにカフェにいってコーヒーを飲むのが日課でした。没頭するための入り口としてコーヒーを使っていたんですね。だから、農園だとか産地だとか、銘柄だとか淹れ方だとかにはほとんどこだわりがなく、”コーヒー”であればいいって感じなんです。もちろん”美味しい”コーヒーがってことになるんでしょうが、欲しいのはたぶん、邪魔をしないコーヒーなんだと思うんです。考え事をしている時間、ふと物思いにふけっている時間を邪魔しないコーヒーであれば、なんだっていいんだろうと思います。

そんなわけだから自然と、「スムースな飲み心地」とか「なめらかな口当たり」のコーヒーを求めるようになっていきました。つるつるとした液体の食感。コクっとした飲み心地。引っかかることなくスルスルと通っていく感じがたまらなくいい。まるで水まんじゅうを口に含んでいるような、そんなコーヒーがいいんです。好きなんです。いつか「水まんじゅう」のようなコーヒーを焼きたいなぁと思って邁進しておるのです。

ところで、コーヒーって98%が水でできているのをご存じですか?
コーヒーの世界では、生豆の品質をいかに落とさず焙煎し抽出するかがとても重要であるとよく言われます。逆に言えば、生豆が持っている品質を超えるコーヒーは作れないということ。同じようなことがお水にも言えるんだろうなぁと思います。当たり前すぎて気づかなかったのですが、お水ってとってもなめらかなんですよね。だからコーヒーの液体のなめらかさって、お水のなめらかさなんじゃないかなぁって思うのです。お酒やジュースやワインやコーヒーや紅茶などの飲み物の中で、一番なめらかな液体はお水なんじゃないかと思うのです。だから、お水のなめらかさを阻害しないようにコーヒーが抽出できたら、つるっつるなコーヒーが淹れられるじゃないかって思ってます。目指せ!水まんじゅうのようなコーヒー!

最近知ったことですが、硬水よりも軟水の方がなめらかなんだそうですね。軟水器を通したお水を頂いたときに教えていただきました。日本は軟水だから水道水でも同じでしょって思ってたんですけど、関東でも埼玉と千葉は80mg/Lくらいあって、軟水と呼べるのは0~60mg/Lなんだそうです。だから全然違いました。コーヒーを淹れるときは、ちょっと贅沢して軟水にするだけで、いつものコーヒーがバージョンアップしますね。やっぱつるつるしたコーヒーは美味しいです。

口当たりには質感と量感があって、質感は液体の一体感、キメの細やかさを言います。そして量感は液体の重さやボディ、粘性の高さを言います。ワインはタンニン感が強いとフルボディだと教わったことがあります。日本酒は大吟醸になるほど重たく感じます。量感と濃度感は比例するんでしょうかね。濃いものほど重たく感じるのでしょうか。面白いことに、タンニン感はなめらかさを阻害しないんですよね。ザラザラとした雑味やチリチリ感は阻害しますが。同じ刺激なのに不思議ですね。まぁ主観ですけど…。