「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

排気ファン止めて、ダンパ全閉で焙煎してみた結果…

昨日のカッピングしました。
とても面白いです。これまでに比べるとかなり量感が強く感じました。えぐみやざらつきもなくなめらかな印象でもあります。一方で、かなり渋みが残っていましたし、メイラード感が強かったので個性は消えてしまっているのかなという感じでした。

ある程度は予想通りでした。表面の乾燥を可能な限り遅らせていたので、芯の温度が上昇する時間を稼ぐことができたからえぐみなく焼けたのだと思いますし、水分が多い状態でYellowingを迎えていますのでメイラード反応は当然活性化するし、渋みも出てしまうのだと思われます。

昔、生豆を芯まで火を通してから焙煎したらえぐくはならないんじゃないかって思って、生豆を茹でてから焙煎したことがあるんですけど、そのときなんかはえぐみもなくとてもキレイで良かったんですけど、めちゃくちゃ香ばしいコーヒーになりました。もうメイラードの味って感じで。美味しかったですけど個性は全くありませんでした。バーベキューソースがどこも似たような味なのは、どんな野菜を使っていてもメイラード反応を繰り返すと同じ味になってしまうからだそうです。それと同じで、コーヒーもあまりメイラード反応をさせすぎると個性が消えてしまうのでしょうね。深煎りが個性を殺していると言われるのもそういう理由からなのかもしれませんね。

メイラード反応が活性化するのは、水分活性値0.6~0.8くらい(水分10~15%)のときだそうです。水分活性は自由水の割合を示したものなので、「水抜き」をしてしまうとメイラード反応は活性化しないんですよね。昔、コーヒーはメイラード反応が大事だし、そのために水抜きも大事だって聞いていたんですけどね…、一体どういうことなんでしょうねぇ。よくわかりません。ただ、さっきの話でもそうですが、メイラード反応のさせすぎは個性が消えてしまうし、糖の分解反応なので、甘さも減ってしまうのかなぁってちょっと思ってます(旦部さんの本には、味覚を刺激するほどの糖は入ってないって書かれてましたけど…)。なので、水抜きはとても大事なんだろうと思っています。

これまでに焙煎した豆のなかで、最初からダンパを開放して焼いたケースと比較してみました。開放して焼いたケースでは、酸味がとても明確に感じました。酸味を裸にしているというか、何かで覆い隠してしまうのではなく前面に出しているという感じがあります。ダイレクトに感じますし、とてもキレイにわかりやすくなっていると思いました。一方、ダンパを閉鎖したケースでは、透明な何かで酸味を包み込んでしまっているような印象です。アタックの時点で酸味をダイレクトに感じることはなく、何かの後ろ、透明な壁の後ろにでも隠れているような感じでした。酸味がやわらかく優しい感じがする一方で、分かりにくくしているとも言えるのかもしれません。

今回、排気ファンを外してダンパを全閉にした状態で焙煎したことで、なめらかで量感があり、渋くメイラード感たっぷりのコーヒーを作ることができました。焙煎の進行に応じてダンパーを開放していく必要があるということを身をもって確認することができました。また、焙煎初期からダンパーを開放するのかどうかによって、酸味の表れ方が大きく変わることがわかりました。前職で使っていた熱風焙煎機がそうであったように、スペシャルティコーヒーの素晴らしい酸味特性を表現していくためにダンパを開放したスタイルが主流であると推測します。所謂、蒸らしダンパーと呼ばれるようなスタイルでは量感を楽しむ手法と言えそうです。個人的には、酸味はあってもいいんですけど、隠れているくらいがちょうどいいので、後者のスタイルを取っていくだろうなぁと思います。