「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

生豆の乾燥…

茹でた生豆。このあとこれを焙煎。

自分の中に、どんなことに対しても、本当に何でもかんでも疑問に思う子供みたいな自分がいて、いつも”なんで?どうして?”って聞いてくる。もう20年くらいのお付き合い。そいつに説明するために、ボクはひたすら調べたり考えたり言語化したりしてるんです。

さて、焙煎を始めたころは、プロファイルを各フェーズに分解して考えていました。今でもそれは変わりませんが、昔よりも自分で試してみて経験するようになりました。その結果、これまでのドライフェーズ、メイラードフェーズ、デベロップメントフェーズよりも以前に、生豆の中心まで火を通すフェーズが必要なんじゃないかなって思うようになりました。それは生豆を茹でてから焙煎してみたり、鍋で蓋を閉じたまま焙煎したりを通して、そう思うようになりました。

茹でた生豆のその後。半端ねぇメイラード感。

この火が通ったとは、一体どういう状態なんだろうと納得のいく答えがしばらく出ませんでした。火が通ったって何なんでしょうね。食べられる状態にすることでしょうか。同じ食材であっても、茹でたり炒めたりして火を通すことができます。一体どういうことなんだろうとずっと思っていました。一体何をもって火が通った状態だと判定するんでしょうか。そのヒントになったのが旦部さんの本にあったゴム化でした。非結晶物質であれば、その温度と含水率によってガラス転移点を境にカチカチのガラス状態から軟らかいゴム状態へと転移していきます。食材が軟らかくなったら火が通ったと判断するように、生豆も軟らかくなった状態を火が通った状態(=ゴム化した状態)だと判断できると思いました。

それからというもの生豆の含水率が一番高く、同時に生豆が一番熱量を必要とする投入直後から多くの熱量を与え、生豆に火を通すことを心掛けてきました。が、ここ最近はスランプ状態です。何をやってもどうにもこうにも、どうにもならない感じがして、がんじがらめで身動きが取れない感じがしてます。

ここまでのアイディアで、火を通すことは間違ってないと思うんです。人間が口にするものであれば、ゴム化は必要なんだと思うんです。何でうまくいかないのかなーって色々考えていく中で、以前はハナから否定していた”まず乾燥を”という考え方は、もしかしたら重要なことなんじゃないだろうかって、考え直すようになりました。

そのきっかけになったのは、ケニアとブラジルでした。先のゴム化が必須の過程なんだとして、含水率が高いことがそれを助けてくれるのだと仮定すれば、どう考えてもケニアの方が簡単に緩んでくれるはずなんです。それなのに(ボクの数少ない経験で言えば)、顕著にゴム化するのはブラジルなんです。含水率の高いケニアではなくブラジルの方なんです。

一体どうしてなんだろうって思いました。旦部さんのガラス転移点のグラフを見ると、含水率を保ったまま温度が上がればゴム化するように見えるのに。なぜケニアよりもブラジルの方が軟らかくなるんだろうって。ブラジルはもともと軟らかい豆だから。確かにそうかもしれないんですけど、それを言ったら何にもならないんでそれは無視します。はて、これをどう考えたらいいだろうか。

ケニアがゴム化しないうちにブラジルがゴム化してる。ゴム化に必要なのは水分と温度…おんど…。

ケニアの水分が生豆本体の温度上昇を阻んでる可能性はないだろうか…。ケニア豆に与えた熱量が生豆本体にではなく、その水分の蒸発に使われてしまっているうちは、生豆本体の温度上昇は望むべくもない。これは沸騰中の水温が上がらないことと同じじゃん?とはいえ、生豆は水ではないので、徐々に温度を上げていくのでそのうち生豆もゴム化を迎えるわけですが、そもそもの含水率が低いブラジル豆の場合であれば、与えられた熱量がダイレクトに生豆本体に届き、その温度を上昇させ、すぐにゴム化を迎えると考えられるのではないでしょうか。(枯れたケニア豆で検証できるかも)

と考えれば、焙煎の工程で必要な最初の作業は、生豆の乾燥なのかもしれない、に至ったわけです。当然、その乾燥程度は生豆の含水率に応じると思いますし、明確に工程を切り分けられるものでもなく、ある程度乾燥させると生豆温度もいい塩梅になってそこからゴム化が始まり…って感じになるんだと思います。そうなると、これまでやってきたような、投入直後から大きな熱量を与えていくことが必要だったのかって思います。それはしっかり経過観察をしていかなきゃなと思ってます。

これまでの経験では、投入直後からゆっくりとしたペースで焙煎した場合、大豆っぽい豆感やえぐみなどを感じやすく、特にエスプレッソにしたときにはちょっと崩れただけで、いい感じでえぐくなるだろうと予想できます。この感じを消すことができるのかどうか。チェックしていく必要があります。

今日は、①火入れ、②乾燥、③メイラード、④デベロップメントというプロファイルで焼いていましたが、その前に①乾燥してあげることが火入れに繋がるんじゃないのかっていう話でした。