「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

釜の熱容量

玉ねぎのスライスと2日塩漬けした豚バラを無水で1時間半煮込んだスープ

スキレットなど熱容量の大きなフライパンと中華鍋とでは一体どんな違いがあるのだろうか。何かにつけて、そんなことがふと頭をよぎります。分かったところで美味しいコーヒーが焼けるわけでもないのだけど、気になります。

以前も書いたように、熱容量は温度変化のしにくさを表します。また熱容量の異なる2つの物体が同じ温度だった場合、熱容量が大きい物体の方が保有している熱量も大きいと言えます。ただし、熱量の移動速度は、熱容量に関わらず、2つの物体間の温度差に比例します。釜と生豆の関係でいえば、釜と生豆の温度差によって熱量の移動速度は決定されます。釜の板厚が厚かろうが薄かろうが、です。

そうなると、板厚が厚かろうが薄かろうが同じ温度であれば、生豆に供給される単位時間当たりの熱量は同じになります。供給される熱量が同じであれば、焼かれ方は同じになる気がしますが、でも実際には異なります。


板厚の違いは、熱容量に違いが出ます。熱容量が異なると、保有できる熱量と温度変化のしにくさが違ってきます。保有熱量が異なっても焼かれ方に違いは出なさそうなので、焼かれ方に影響を与えているのは温度変化のしにくさの方なのかもしれません。


鉄板表面の温度の上昇率RORを考えてみると、熱容量が大きい方がRORは小さく、急激な変化をしにくくなります。慣性の法則に似ていますね。重たいものほど急な速度変化ができない。すると同様に、食材との温度差に急激な変化が生じないので、食材へ供給される熱量も大きく変動しないことになります。保有している熱量の違いばかりに注目していたけど、この変動の小ささが食材を焦がさずに焼く秘訣なのかもしれません。


(ちょっと思いついたことを話しますが)釜と生豆の温度差が大きいことよりも、その時間変化が大きいことの方が問題なのだとしたら、温度差が大きくてもその差が変化しないように、大きな熱量を与えることができれば、焦げることはないのかもしれません。お化け焙煎機が4,5分で焙煎してしまうことを考えると、あながち間違いではないのかもしれません。投入温度が高くてもその後の火力が十分であれば、焦げないということもあるかもしれない。違うかもしれないけど。ただ、もしそうなると釜の熱容量が低い焙煎機の場合、どのように焼いたらいいのでしょうか。熱風焙煎機などどのように使ったらいいのでしょうか。

余談ですが、昔に比べてなめらかなコーヒーが焼けることが多くなりました。特にダンパを閉じるようになってからです。ですが、それでも目標としているコーヒー屋さんには及びません。まるで静止画のようにクリアなあの感じはどのようにすれば出せるのか。今は透明なプラスチック板を金たわしでこすって細かい傷をつけてしまったような感じになっています。この細かい傷は、生豆へ供給する熱量の変化が問題なのでしょうか。