「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

プロファイルの再現性が先決か…

焙煎という技術を上達させるためには、何をするべきなんだろうかと常々考えてきた。

がむしゃらに焼かなければ始まらない、ひたすらカッピングしなければ始まらない…そうかもしれないけど、がむしゃらに焼けば、ひたすらにカッピングすれば、どうにかなるのか。

つべこべ言わずに焼いたらいいのかもしれないけど、そうやってきて6年、手応えなんて何一つない。自分のコーヒーを美味しいと思えたことは一度もない。それは最上級に美味しい、感動するカップって意味じゃない。安心して飲めるコーヒーが焼けない。いつも嫌なものが入ってる。えぐみ、雑味、渋み、鋭い酸味…。

どんな淹れ方しても、飲んだ感想は「ん~…」ってなる。
嫌なものがあると身体が警戒する。ぎゅってなる。
感動なんかしなくていいから、安心できる味にしたい。

それを探してる。そんなコーヒーになるようなプロファイルを探してる。
だから、あれこれ試すしかないと思う。試すしかないんだって、そう思ってやってきた。


のだけど、最近ちょっと思うことがある。まずやらなければならないのは、プロファイルを探すことなんかじゃなくて、一つのプロファイルの再現性を高めることなんじゃないだろうか、と。

焙煎士というのは焙煎機の操作者なわけで、操作のプロであるならば、温度曲線の再現なんていつだってお手の物でしょう。それは所有している焙煎機の特徴を理解しているからであり、温度曲線の再現性は焙煎機の操作技術の習熟度(焙煎士の技術)を表していると言えなくもない。


そもそもなんで、プロファイル探しより再現性を高めることが先決だと思ったのか。
それは、プロファイルと味わいに因果関係を感じなかったから。

数値上は同じなのに味わいが違うことは、当たり前のように経験してきた。
当たり前すぎてそういうもんだと思ってたけど、本当にそうだろうか、それって本当に起こるんだろうか。ただ単に、辻褄を合わせただけの数値を同じプロファイルだと思い込んでいただけなんじゃないだろうか、自分よ。

例えば、投入温度は180℃でした、と言ったとき、
    その180℃は上昇途中の?それとも下降途中の?
    もしくは下げ(上げ)止まりしたときの?
    ダンパは開いてる状態?閉じてる状態?
    すでに点火済み?まだ?
    インターバル中はどのようにしていた?

これだけでも状況が全然違うにも関わらず、プロファイル的にはどれも180℃投入になる。こうやって辻褄を合わせただけのプロファイルで、味が同じにはならないんだなぁって言ってたけど、そうじゃなくない?って気がした。

ただ見た目の数値を合わせたってだけで、焙煎機の状況が同じになったわけじゃない。
そこを同じになるように調整してから投入しないと同じプロファイルとはいえない。
にも関わらず味が違うと騒いでたのかと思うと、ため息が出る…。


数値を合わせるだけなら簡単だけど、本当に焙煎機の状態を合わせるのは難しい。
だって、表示されてる温度は当てにならないんだから。

暖機し終わったこいつが、こないだと同じ状況だなんて、そんなことどうしてわかる??

だから「温度曲線を再現する練習」が必要なんだって思った。そういう技術がまず必要なんだって。バッチをまたいでも、そして日をまたいでも同じ曲線を描くことができるようになったら、焙煎機の状況をいつでも同じにできると考えてもいいかもしれない。

それができて初めてプロファイルと味わいがリンクする。それが当然なんだけど。プロファイルと味わいがリンクしてないってのは、まったく別のプロファイルを見ながらカッピングしているのと同じで、それでは今後の見立てが意味をなさない。これが無意味だってことはすぐにわかるのに、同じことをしていたとは思ってもみなかった。


焙煎機について習熟するという意味で「温度曲線を再現すること」は一つの目安でしかない。”実際に”温度曲線を完璧に再現しても、同じ味わいにはならないと思う。それは現実的に焙煎機をまったく同じ状況にすることが難しいということで、どうしても誤差は生まれてしまうからだ。曲線を再現できても味わいが同じにはならないということは結局大前提になるのだろうけど、それを誤差に収められるかどうかが焙煎士の腕なんだと思う。

そもそも二つのプロファイルに対して、それぞれの操作の違いによる味覚の違いをカッピングで見出そうとしているにも関わらず、前提となる焙煎機の状況がそれぞれ異なっていたら、重さと長さを比較するようなもので意味をなさない。その前提となる状況の差を限りなく小さくしたうえで、初めて操作による違いを比較できる。だからプロファイル探しよりも再現性を。

まずは、バッチごとの差をなくすために、インターバルの取り方を調整して、
次いで、焙煎日ごとの差をなくすために、暖機の仕方を調整する。

これによって少しでも進展してくれると嬉しい。