「余白の音」に耳を澄ませて。

珈琲とからだ、ときどき言葉

熱伝導による焙煎と熱伝達による焙煎の違い

熱量の移動形態として
 ・流体(熱風)からの場合は熱伝達
 ・釜からの場合は熱伝導
と呼ぶのだと思っています。

いずれにしても「生豆に熱量が供給されていること」に変わりはありません。当然、単位時間当たりの供給量、熱量の移動速度は、温度差や対流速度や接触面積、接触時間などによって変化するのでしょうが。いずれの方法を使っても生豆は温まり、いずれは焦げていきます。


一方で、水分の蒸発については、供給方法によって大きく異なると思われます。洗濯物の乾燥を考えてみれば、水分の蒸発は常温でも起こるので(蒸発 ≠ 沸騰)、焙煎機に生豆を投入した時点から水分の蒸発は始まっていると言えます。

 ・蒸発:水表面から気化すること(常温でも起こる)
 ・沸騰:水中から気化すること(100℃で沸騰が始まる)

木材の乾燥技術などを参考にすると、部材の温度が高くなるほど、また熱風の対流速度が速くなるほど、乾燥速度が大きくなるそうです。となると、熱伝達は生豆の温度上昇に加えて、生豆の乾燥も同時に行っていると言えそうです。


味覚的な違いは経験的なことしか言えませんが、

  • 口当たり・・・熱伝導の方が質感がなめらかに、量感は重たくなると感じます。質感に関しては自信がないのですが、なめらかに感じることが多いです。つるつるとした感覚になることが多いです。量感は非常に顕著だと思います。かなり液体の一体感、弾力、厚みを感じます。(質感に関しては、この量感に引っ張られている可能性もあります。トロっとしているとなめらかにも感じてしまうのかもしれません。)
  • 酸味・・・熱伝達の場合の方が酸量を多く感じますが、何よりも酸味が前面に出ているように感じます。よく言えば非常にダイレクトで明確、キレイ、見やすい、マスクされていない、露出している、トランスペアレントというか透き通っているという感じでしょうか。一方で、熱伝導の方は何か膜のようなもので包んでしまっているかのような印象を受けます。ダイレクトに舌を刺激していない感じで、薄皮が一枚挟んであるような印象です。酸味が露出していない感じなので、酸味が軟らかく心地よく感じます。
  • 透明感・・・クリーンカップと呼ぶべきものでしょうか。まったく自信がありませんが、熱伝導の方が口に含んだときの印象は透明感という言葉しか出てきません。これも量感に引っ張られている可能性がありますが、熱伝達の場合は白っぽいすりガラスのような印象ばかりで透明感を感じたことがありません。
  • 香り・・・熱伝達の方が鼻に抜ける感じがはっきりしていると思います。口に含んだ後の香りの立ち上がりというか、舌離れの良さを感じることが多いです。
  • その他・・・熱伝導は液体がしっとりとした印象になることが多いです。熱伝達はドライを感じることが多いです。舌離れの良さにドライも多少必要だと思うので、そのせいなのかなとも思います。